ヘキ。

日々のあわいが、すっかり後追いになっている。その日のことをその日のうちに、または、その時の考えを新鮮なうちに記していきたいと思っているのに、夜は特に、睡魔にあっさり敗北している。

1日が終わると、くたくたである。こんなに疲れやすかったっけとうとうとしながら、ベッドに倒れ込む。どんなに眠くてもベッドにはたどり着くシステムになっているらしく、床の上で目覚めたことは、実はまだない。

1日中、家にいられる日はごきげんである。自分は書くことがすきなのだなとあらためて感じる瞬間。言葉を扱う際には右脳も左脳も(どっちが感性でどっちが理性なのかが覚えられない)フル回転させる必要があるから、別の疲労感があるのだけれど…原稿をひとつひとつ仕上げていく快感が、終始わたしを盛り上げる。

1行の文字数を決め、行数を決め、全体のバランスを見ながら書いていく。文章の温度や湿度、リズム、流れ、間合いや余白、色み、音感、見た目の美しさ…などさまざまな要素を一度にクリアしながら書き進めるのは、パズルを解き明かしていくような、鍵を開ける暗号を書きこむような、緻密でぞくぞくする感触をともなう。産みの苦しみを存分に味わうこともあるけれど。ひとすじなわではいかないところが、さらに甘美さを増していく。これこそが、癖(ヘキ)なのかな。