人魚姫。

海の世界で自由に暮らしていた人魚姫は、人間の王子に恋をして、どうしてもそばに行きたくなった。勇気を出しておそろしい魔女のもとへ行き、世にも美しい声とひきかえに2本の足を授かった。人魚の両親、ねえさんたちとはもう会えない。2本の足でおどるように歩くたび、刺すような痛みが貫いた。それでも彼女は、王子のそばにいたかった。だれよりも王子を理解し、愛おしみ、見つめ合っているだけで幸せだった(と思う)。

王子が全身全霊で自分だけに愛を誓わなければ…人魚姫は海の泡と化す。人間の姫を妃に選んだ王子の心臓に短刀を突き立てれば人魚としてまた生きられる、というチャンスが与えられても、彼女は海に身をおどらせてしまうんだよなぁ。

デンマークの童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンによる、あまりにも高名な作品。アンハッピーな空気がつねに漂い、せつなさ満載で締めくくられる。原作の邦訳によると、人間の愛情に頼らなければ「死なない魂=限りない命」を授かることができず、天国へはいけないらしい。または風の精となり、善行を300年積めば、願いがかなうというのだ。

見方しだいでは、重たい女なのかもしれないけれど、こうと決めた生き方を貫き通す意志の強さや気高さがまぶしい。だれかをまっすぐ愛することができるのは、才能だよなぁ、とも思うしね。