お城はお守り。

おもしろそうだから、という直感にしたがって姫路へ引っ越して約10ヵ月。お城の存在がこれほどまでに気持ちを安定させるなんて、というまぎれもない事実におどろいている。

特に城好き、歴史好きというわけではないし、大改築がおこなわれてからまだ一度も入城していない不届き者だ。界隈をもっと散策したいなと思っていたのに、夏場は暑すぎて散策を怠る始末。または日々バタバタしすぎて、小一時間の散歩ができない、というはずかしい状況になっている。

けれど、外に出れば必ず、お城が目に飛び込んでくる。かつて場内だったエリアのはしっこで暮らし、何かにつけて目にするお城は、いつ見てもなんべん見ても飽きることがなく、守られているという実感で満たされる。根拠はないけど。

また、お城の背後に山々が見えるのが、わたしにはとてもいい。神戸育ちであるせいか、目が届く範囲に山や緑がないと不安定になる。大阪で暮らした3年間に終止符を打ったのは、山がない!という悲壮な感情だった。あのころは人生で一番、アルプスの少女ハイジの気持ちに近づいた。

もう何年も前、京都の御所の近くにある旅館を取材したとき、女将さんが「ここらへんの子は、御所で遊ぶんよ。贅沢でしょ」と話してくださったのを思い出した。幼いころから本物がそばにあり、そんな日常を特に意識しない(普通であるという状態)なんて、実に豊かなことである。お城に「ただいま」と言える、すこやかな日々に感謝。