おふくろさん。

たしか、小学校の卒業文集で。将来の夢を記すページに「日本一のおふくろさん」と書いた、気がする。なにを書けばいいのかわからず、頭に浮かんだことをそのまま書いた。

卒業後、その文集を読み返したことはない。そう書いたという記憶だけがなにかのはずみでよみがえる。おかあさんと書かなかったのは、なぜなのか。そもそも、「だれの」おふくろさん?日本一ってなんだろう。あの時の自分に聞きたいことは、数多い。

当時は確か、小説家になりたいと思っていたはず。後に、国語(と美術)が好きだ、得意なんだという思いこみだけで世の中を渡っていく前のお話である。

今となっては、事実を追求するすべはない。いつかわかるかもしれないし、もやもやしたまま天寿を全うするのかもしれない。あの時のわたしに話を聞けたらいいけれど、残念ながらまだ、タイムマシンにお目にかかったことはない。

そういえば、わたしには母性本能がない…と昔から思っている。

子どもは天使だ、なんて思わないし、子どもであろうと大人であろうと、1人の人間だ。好き嫌いや相性は相手によるし、子どもが好き!という感覚もよくわからない。どちらかというと、子どもはこわい。子どもに限らず、人はおそろしく、すばらしいものだというのが実感である。

結婚は?子どもは?再婚は?と聞かれることにも慣れて、笑顔できり返せるまでになった。子どもを授かることはなかったし、これからもきっとそう。わたしの子どもは、考え方とか思想とか、目に見えないナニカなのかなと思っている。