師匠。

いいものをとにかくたくさん見なさい、と言われた。

この人は、と思う上司や先輩はもれなくそう言った。けれど20代のころは、何がどういいのか、なぜいいのかもわからなかった。もしかすると今でも全然わかっていなくて、わかった気になっているだけなのかも…とさえ思う。

百貨店に勤めていたころは、上司や先輩に恵まれた。早く追いつきたくて、1人前になりたいくて、先輩に仕事を教わりながら、盗みとる(学びとる)ためについてまわった。金魚のフンだと言われたことも、わたしにとっては褒め言葉。ひどい負けず嫌いでもあった。

フリーランスのコピーライターとして活動を始めてからは、デザイナーさんについてまわった。百貨店時代のように朝から晩まで背中を追うのは無理だったけど、その人がいいと言うモノを見て、その人が興味を持つコトにアンテナを張り、一緒に歩く時はその人の視線の先に目をこらし、何がどう気になるのかを推測した。生意気な発言を重ねてしかられたり、デザインワークをすぐそばで見せてもらったり、「デザインはひき算」で「これ以上できないところまでそぎ落とし、最後に一手足す」ものであり、「広告はラブレター」なのだと教わった。クリエイティブに関わる者としての心構えが、いつのまにかそなわっていた。

わたしの師匠は、お世話になった方々の集合体だ。

生きていくには、軸が要る。一定期間、特定の人物を追いかけることで自分なりの基準が生まれる。何人も見比べることにより、思考や視点には流派があって、正解なんてないことが身に染みる。