乙女と悪魔。

うそくさい、と言われて半泣きになった。そんな言葉を投げかけられたのも、なぜか泣きそうになったのも、めずらしいことである。

こう見えて、おだやかな日常を願っていること、大切な人が無事で帰ってきてくれればそれだけでうれしいこと、ふだんはケンカなどしないこと、ケンカをする気にもならないこと、誕生日やクリスマスに特別なことは必要なくて、ただただ一緒にすごせたらしあわせであること、春になったら桜を見に行きたいことなど…言葉にすればするほど、薄っぺらくなっていくパターン。いずれも、わたしのイメージに合わないらしく、「想像を超えて、実は乙女だったことにおどろいた」という感想が届いた。

非常によくありがちな、ささやかなしあわせを願っているだけなのに…何がどう「乙女」なのか、その時のわたしにはよくわからなかったけれど。つねに腹黒く、何かをたくらんでいる悪魔の印象が強いのだな、とわかったのはずいぶんたってからのこと。そこまで悪魔っぷりが染みついているのなら、まことに光栄なことだと思う。

あぁ、そうか。ここまで書いて、ようやくわかった。悪魔っぷりを発揮していながら、天使のような願いを抱いていることに違和感を抱かれたのかもしれないと。小悪魔、と表現すると別の意味をともなうけれど、言動のはしばしに至るまで悪魔的である方が、その人にとっては理解しやすいということだったのだろう。

ところで、なぜ半泣きになったのかを考えてみたところ。わたしではだめなんだ、と落胆したからなのだと思う。知らず知らずのうちに期待を寄せていたらしい。